2010年06月10日

老い日記[84]――生誕18,652日/禁煙37日目

 
 一日中、新宿の「芸能花伝舎」に籠もりっぱなし。
 まず、芸術統括団体のYさんと「コミュニケーション教育の指導者養成」について意見交換。みんながよかれと思っていろんな仕事を誠実に進めているのに、それが大きな一つのうねりになっていかない。それが日本演劇界の弱点か。Yさんと話しながら、そんなことが頭を掠める。

 午後1時からは同じ屋根の下の稽古場に移って、『誰も見たことのない場所』の若手特訓。あまりの不出来に予定をずいぶん押して、夜は『眠れる森の死体』のほうの稽古。こちらも結局、若手に時間の大半を取られる。
 この不毛な稽古がやがて大きなうねりとなって、一つの作品に結実する日が果たして来るのだろうか。

鳥居.jpg
正月には必ず出かける花園神社の鳥居を久しぶりにくぐる。
花園神社.jpg
鳥居をくぐったら工事中で、本堂はすっぽり隠れんぼ。
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2010年06月09日

老い日記[83]――生誕18,651日/禁煙36日目

 
 約束の時間に、余裕を持って到着する人と間際ギリギリに滑り込む人、2種類の人間のうち我が身は間違いなく後者に属する。『モリー先生との火曜日』を観るため、乗り換え駅でもダッシュし、開演ギリギリに本多劇場に駆け込む。
 終演後、主演二人それぞれの楽屋を訪ねて挨拶。俳優Kは共通の知人の女優から我が癌のことを聞いていたらしく、こちらが楽屋見舞いに行ったのに、逆に「どうなの?大丈夫なの?」と真剣この上ない顔で心配してくれる。今更ながらいろんな人に気遣わせていたんだなぁと恐縮至極。

 数少ない稽古OFF日なので今日は舞台のハシゴと前から決めていて、夜は新宿文化センターでヴッパタール舞踊団の『私と踊って』を観る。今回の作品はやたらと直球勝負だなぁと思ったら1977年初演の再演だった。そうか、若さゆえの直球だったのかと妙に納得。改めてピナの新作はもう二度と観られないんだなと思うと、やはりたまらなく残念でたまらない。

 それでも今日の2本の舞台で、明日からまた怒涛の日々に突き進むだけのパワーはもらった。
 よぉし、駆け込み人生だろうが、ひるむことなく駆け込むぞ。(まずは駆け込みをやめましょう)

ピナ・バウシュ.jpg
劇場にはピナの大きな遺影が。写メ撮る人、多し。
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2010年06月08日

老い日記[82]――生誕18,650日/禁煙35日目

 
 毎夜、疲れまくって帰宅し、夜更かしが利かなくなっている半面、このところ朝は老人のように6時台には目が覚める。これで朝からウォーキングなんぞに汗を流し、きっちり朝食を摂り、さわやかな空気で肺を満たしつつ午前中を過ごせば、たちまち健康体を獲得できるのだろうが、現実はもそもそと起き出してパソコンに向かい、ただダラダラと書き物仕事に追われるのみ。健康ライフはただの妄想と化している。
 
 午後、編集長を務める機関誌の座談会。舌鋒鋭い論客4人を相手に司会を担当し、今、演劇界で重要なテーマの一つになっている「劇場法」について、あれこれ意見し合う。十分な経験と広い視野に立った人たちとの意見交換は身になることが多く、あっという間に2時間以上が過ぎる。

 夕方からは予定を変更し、今日も『誰も見たことのない場所』の稽古。美術家も加わって、昨日の無駄バミリを改めて取り直し、新しい美術プランで芝居がスムーズに進行するのか、動線・立ち位置の場当たりを頭から順に通る。
 若手俳優の演技に目くじらを立て始めると果てしない負のスパイラルにはまり込むので、若手のぬるぬる演技は見て見ぬふりをしつつ、ひたすら動線のマズい個所だけを修正しながら進めていく。なんとか全容が掴めつつあったが、台本残り数ページのところで時間切れ。後回しにしていたムーブメントの位置決めも次回に持ち越し。残尿感だけがたっぷり残る。
 
 稽古終了後、稽古場に遊びに来てくれた米子の照明家・Mさんを交えて美術家、俳優2人ともども飲みに行く。
 美術家はまだ抗ガン剤治療の真っ最中なので当然飲めないのだが、流され上手な演出家はピロリ菌との闘いをまだ始めていないのをいいことに生ビールを注文。さらに話が弾んできたのを理由に、調子に乗ってウーロンハイまで飲む。だが気のせいか、酒を受け付けない体になってきている気がする。
 
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機関誌のデスクをやってくれていたOさんから快気祝い(?)が届く。健康指南本と「ティムさんの大麦若葉」。早い話、体を温め、青汁を飲めということらしい。
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2010年06月07日

老い日記[81]――生誕18,649日/禁煙34日目

 
 今日は午後1時から夜10時まで、みっちり『誰も見たことのない場所』の稽古。のはずだったのに、演出助手の連絡がうまくいってなかったらしく、客演が稽古に現れず。まったく、何やってんだか。
 おまけに複雑な平面図を1時間以上もかけて、せっせと稽古場にバミってみたものの、夕方からは別の稽古場に移動することになっていたことが頭から抜け落ちていて、バミリはほとんど無駄に終わる。ああ、壮大な無駄バミリ。まったく、貴重な稽古時間に何やってんだか。
 夕方から人は揃ったのだが、移動した稽古場は狭くて実寸がまるで取れず、動きや立ち位置などはちっとも決められない。何のためにわざわざ稽古の演目を振り替えたんだか。
 こうして、まったく何やってんだか、の3連発。芝居には大いなる無駄も必要とはいえ、この手の無駄は精神的消耗が激しい。

 稽古終了後、『眠れる森の死体』のほうで使う100号キャンバスが届いていたので、ひとまず俳優O宅まで運ぶことになり、ハイエースのルーフキャリアに積んで出動。
 だが到着して、いざ入れようとしたら物が大きすぎて階段を上がれない。どうあがいても無理。おいおい、想像すれば事前に判断できたんじゃねぇの? 結局、ハイエースに積み直し、我が自宅に運び
入れることに。夜中に車であっちうろうろ、こっちうろうろ。まったく、朝から晩まで笑えないコントのような一日。徒労感とストレスだけをたっぷり溜め込んで6月7日が終わる。

無駄アート.jpg
稽古場の床に出現した芸術的な幾何学模様。無駄アート。(泣)
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2010年06月06日

老い日記[80]――生誕18,648日/禁煙33日目

 
 吉祥寺シアターに『ドレッサー』を観に行く。
 劇場入り口で久々に、一跡二跳の公演に少女の役で出演してもらったことのある男優Sさんを見かける。煙草を吸ってたSさん、こちらに気づいて「お!」、こちらも近づきながら「お!」。
 「久しぶりだね」と挨拶を交わし、握手なんぞ求めて「今度ホラ、あの芝居に出るんだよね?」などと話を繋ぎ、「んじゃ、お先」と言って劇場内に入って座席につくと、しばらくしてやってきたSさん、隣の席でした。(笑)
 終演後、主演の俳優Kさん、女優Oさんを楽屋に訪ねて挨拶。Kさんに「決まってる店があるんだけど」と飲みに誘われるが、我が体、まだまだ自由に酒はいただけませぬ。なので、「今から稽古なんで、また今度」と言って、久しぶりのSさんにも別れを告げて稽古場に向かう。

 その稽古、主演の若手男優Oが休みのため、自然と罵詈雑言の矛先は残る若手男優のS&Nに向かう。なぜ、奴らは経験が学習にならないのか?
 違う違う、何やってんだ、と止めるたびに前に出てやってみせ、気がつけば誰よりも演じてる時間が長い。俺、俳優?
 
快気祝い.jpg
稽古場に遊びに来てくれたHに快気祝いをもらう。開けてみると、酒。嫌がらせか?
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2010年06月05日

老い日記[79]――生誕18,647日/禁煙32日目

 
 新国立劇場に井上ひさしさんの『夢の痂』を観に行く。
 劇場に入るや新国立劇場プロデューサーのYさんにいきなり、「98%は大丈夫だって?」と言われて驚く。「早っ」。思わず口をついて出る。なんという情報伝達の速さ。
 もちろんYさんは我が快復を喜んで声をかけてくれたのだが、人の親切に慣れていないひねくれ者は逆に戸惑う。「古城さん、癌になったってよ」「あの人も終わったね」。そういった噂も千里を駆けめぐっていたのではないかと勘ぐりたくなる。

 夕方から美術家Iさんも参加して、『眠れる森の死体』の美術実験。劇場空間が狭いのに置かねばならぬ道具が多すぎて、果たして「演技エリア」がきちんと確保できるのか。この非常に初歩的な問題で大いにつまづいている。
 誰だよ、この作品でここの劇場を押さえたのは? もちろん、この芝居を熟知しているひねくれ演出家です。(泣)

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西新宿の夕日。バカ高いビルが林立する街なのに、不思議と陽射しは燦々と降り注ぐ。
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2010年06月04日

老い日記[78]――生誕18,646日/禁煙31日目

 
 診察カードを受付機に挿入、PHSを慣れた手つきで受け取り、表示に従って、これまた馴染みとなった「51番」で待つこと約10分。名前が呼ばれて診察室に入る。
 17日ぶりに会う担当Y医師は、なんだか懐かしの戦友のよう。「熊本は大丈夫でした? あちらで病院にかからずにすみました?」「はい、おかげさまで。紹介状、書いていただいてありがとうございました」と挨拶を交わした後、切除した癌細胞組織検査の結果が淡々と告げられる。
 我が早期胃癌、病変18mmの周囲には癌はなし。深さも粘膜層内にとどまっていて粘膜下層まで到達しておらず。リンパ節等への広がりも認められず。つまり完全切除、成る。胃を半分切り取る再手術の必要なし。
 「再発する可能性は95%、いや98%ないと思います」
 Y医師がなぜパーセンテージを言い直したのか、その3%にどれほどの意味があるのか素人にはさっぱりわからないが、とりあえず癌撲滅に勝利したことはわかる。「今後は経過観察ということで、半年後に内視鏡を入れて、CTを撮りましょう」
 やりました。我が体、まだしばらくは生かされし。ここに、3月19日に突如として始まった「古城十忍・癌物語」、無事に閉幕。おめでとう。(拍手喝采)
 と思いきや、Y医師がまたも淡々と言葉を継ぐ。「再発防止のために、ピロリ菌を除菌しておきましょう」「……ピロリ菌、ですか?」「ええ。検査結果でピロリ菌が見つかってますんでね」「はぁ……」「薬を1週間服用していただければ大抵の方は駆除できますから、その上で呼気テストをして、除菌できたかどうかを確認しましょう」
 どうやらピロリ菌は胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃癌などと浅からぬ因縁があるらしく、ここで沸々とブンヤ(新聞記者)魂が頭をもたげる。「どれくらいの数の菌が今いるんですか?」「数はちょっとわかりませんが、呼気テストである程度はわかります」「薬の服用だけで菌はなくせるんですか?」「ええ、大抵の方は。中には菌が残る方もいらっしゃいますけど、その場合はさらに薬を変えて服用してもらいます。それでほぼ、除菌できますよ」「ほぼってことは、それでも残る人がいるってことですね?」「数パーセント程度ですが。あと服用中に副作用の出る方も何割かいらっしゃいます」
 副作用? Y先生、なんだか健康とは程遠い話になってきてませんか?
 「下痢になったり、中には味覚障害が起こって食べ物の味がわからなくなる人もいるんですが、でも服用が終われば副作用も治まりますから、ちょっと我慢して1週間飲み続けてください。途中でやめてしまうと効果がなくなるので」「(これ以上の抵抗は無意味と判断し)……わかりました」「お酒は飲まれますか?」「(何を今さら聞くんだと思いつつ)いえ、今回のことがあってから、ずっと飲んでませんが」「そうですか。この薬の服用中もお酒は飲まないでください。飲むと薬が効かなくなりますから」「(えー、またもお預け?と思いつつ)……わかりました」
 こうして次回、呼気テストの日を予約。薬を服用後、しばらく時間をおかねばならないらしく、予約日は3カ月以上も先。
 癌物語は終わったものの、新たに第2章となる、「古城十忍・ピロリ菌物語」の幕開け。こんな展開、誰が予想する?

 それでも、とりあえず癌とはオサラバしたんだと晴れ晴れとした気分で病院を出て、生まれ変わった気分ついでに散髪に向かう。
 「鬢の白髪も部分染めしてください」、明るく言うと、理容師は残りわずかな我が髪を掻き分けつつ、まじまじと見て、「染めるのはやめといたほうが……」。
 え? これまた予想外の展開に、驚いて鏡越しに理容師を見る。「頭皮がずいぶん荒れて、炎症のようになってるところもありますから、皮膚がもっと傷むと思うんですよ」「いやでも、部分的にちょこちょこってやれば大丈夫じゃないですか?」「いやぁ、どうかなぁ。すいません店長、ちょっといいですか」
 店長までやってきて我が少ない髪を掻き分け頭皮観察。そして、「炎症が治まってからのほうがいいと思いますよ」。
 いやあの、俺ね、今日生まれ変わったんだから。ある意味、記念だから。髪もスッキリさせてさ。心の中で激しく説得にかかるが、店長はきっぱり、「お勧めできません」。
 ……人間、思うように生まれ変われるもんじゃありません。

 稽古終了後、劇団員を何人か誘って軽く飲みに行く。
 だって癌物語、打ち上げだよ? ピロリ菌との闘いが始まったら禁酒が続くんだよ? 今日ぐらい記念にいいんじゃね?
 いくつも理由を並べ立てるこの男、自分に甘い甘い。ほとんど駄々をこねるクソガキ同様なり。しかしながら、ずいぶん久しぶりの生ビール。さすがに美味し。俺って健康。一瞬だけ思う。

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すっかり馴染みの飲み屋に入るような気分で入る「51番」。

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病院内のトイレの貼り紙。「どういたしまして」
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2010年06月03日

老い日記[77]――生誕18,645日/禁煙30日目

  失ってしまうと二度と取り戻せない。残念ながら、そういうものは確かにある。
 例えば、膝の軟骨。調子がいいときは意にも介さないでいるが、アタタタと思い出したように膝は痛む。決して治っているわけではない、というか、治りようがない。失った軟骨は増殖してはくれないから、磨り減ったまま、不意に痛みが走る膝となんとかうまく付き合っていくしかない。
 例えば、下がってしまった歯茎。歯と歯の隙間が少しずつ広がって、やたら食べ物が詰まるようになったら、それはもう手遅れ。その隙間が埋まることは二度とない。「歯周病は進行を食い止めることはできても、改善されて歯茎が伸びることはないんですよ」。もう何度も歯医者から聞かされている言葉を噛みしめながら、次第に(歯茎が下がって)長くなっていく歯を寂しく見つめるしかない。

 薬で痛みは消えたものの、違和感の残る左下の奥歯を治療せんがために、歯科医院へ勇んで出かける。
 「じゃ今日は左下の奥の歯に麻酔を打ってクリーニングしますね」と言った歯医者、口の中を覗き込むや、「あ、ここ、歯茎が腫れてますね」と奥歯の手前の糸切り歯の歯茎を指でぐいぐい押す。「痛いですか?」「多少。でもそれほどでもないです」「膿がたまってますね」「こっちの歯茎も少し腫れてるんですけど」「ああ、ホントですね、こっちも膿がたまってますね」「でもそんなに痛みはないです」「今日は麻酔はやめて、この2個所を膿を出して洗いましょう」
 最も違和感のある左下の奥歯の治療はまたしてもお預け。放っておけばおくほど、左奥の歯茎がみるみる下がって歯が抜けるんじゃないかと気が気でないが、歯医者は宣言した2個所をガシガシ洗って抗生物質を入れて、「はい、じゃ今日はこれで」。 ……歯周病との闘いはまだまだ果てしない。

 ところで、「FOR RENT」の貼り紙が貼られたまま借り手がつく気配のない空きスペースが近所にある。以前ここは24時間オープン(夜間は無人)の自動レンタルビデオ店だった。夜間はカードを使って店内に入り、機械にカードを挿入、借りたいDVDをチョイスすると機械から出てくる。新作が165円と安かったのでそれなりに重宝していたのだが、そのプリペイドカードに新たに3000円チャージした途端に、店は閉じた。
 そんな、これって詐欺じゃないのか? このお金も失って二度と取り戻せないのか?
「FOR RENT」を見るたびに言いようのない虚しさに包まれる。

 その一方で、もちろん失ってしまったほうがいいものもある。例えば、いつのまにやら発生してしまった癌細胞。きれいサッパリなくなってくれれば、こんなに有り難いことはない。
 さてさて我が胃癌。このまま完治なのか、胃を半分摘出する再手術になるのか。明日、運命の審判が下される。

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かつてレンタルビデオ店。バカヤロー、金返せ。
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2010年06月02日

老い日記[76]――生誕18,644日/禁煙29日目

 
 鳩山総理が辞任表明。小沢幹事長も道連れ辞任。号外が出るであろうニュースをシラけた思いで受け流し、昼から東北沢のスタジオで『眠れる森の死体』の映像撮り。
 ライティングやサイズ決めにも時間がかかり、何度もテイクを繰り返すが、老体監督はすぐに集中力が切れるので、後に撮ったカットほど、「まぁ、いいんじゃない」「なんとかなるんじゃない」を連発して次々にOKを出す。結局、編集勝負ですもんね、映像のGさん。後は任せた。

 撮影は5時頃に終了。直ちに撤収し、そのままハイエースで新宿の稽古場に移動。よっしゃ、今日から久々の劇団のウォーミングアップを張り切ってやるぜと臨んだものの、体、硬い硬い。動かない。柔軟性はどこへやら。腹筋、上がらない。背筋、反れない。あがるのは息だけ。「しばらく何もせずに放っておくと、いいですか皆さん、人間の体はここまで機能しなくなります」と、誰かに教えたくなるほど驚きを通り越して、むしろ感心。左肩に比べ右肩が異様に硬くなっている事実も判明。いかんいかん、これでは健康体に戻ったとは言い難い。一刻も早く、歌って踊れて柔軟性抜群の演出家に戻らなくては。

 『眠れる森の死体』ではポラロイドカメラを使う場面があるのだが、今やポラロイドカメラは骨董品の領域にあると思い知る。まずフィルムが製造中止。入手するにはネットオークションしか方法がなく、それも1万数千円という高値。
 この芝居の初演は15年前。我が身の気持ちは何ひとつ変わっていない気でいても、15年という歳月で体は恐ろしく硬くなるわ、当時のカメラは骨董品になるわ、実はいろんなことが相当に変わっている。「まだまだ若いもんね」と言いつつ、その変化にまるで気づかない。それが何より「老い」の証明なのかもしれぬ。

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「午後の紅茶」とか「プロティン・ウオーター」とかに、ついつい手が出るのだが、ダメダメ、人間、水を飲みなさい、水を。
「霧島の天然水」は我が故郷だからという依怙贔屓は抜きに、かなり美味い。「よなごの水」は後味がやや苦手。金属っぽさが少々、後を引く。
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2010年06月01日

老い日記[75]――生誕18,643日/禁煙28日目

 
 先週同様、大学での実習授業のため上野に赴く。先週の「やりたくなくてもビシッとしなさいビシッと」ムードが功を奏したのか、学生にかなり嫌われ、今日の受講者は18人に激減。
 それでもワークショップには程良い人数になり、ビシッとやる学生たちがほとんどだったので内容は進む進む、即興演技にまでチャレンジ、俳優よりも面白い学生もちらほら。

 授業を終え、次回公演『眠れる森の死体』のフライヤーなんぞ配って「お疲れさまでした」と引き揚げたのだが、着替え終わって更衣室を出たところで出くわした女子学生に「あの、この中に先生の名前はどこにあるんですか?」とフライヤー片手に尋ねられる。女子学生は裏面の顔写真が並んでいる辺りを指し示していたので、あろうことか俺を俳優とでも思っているのかと訝りつつフライヤーをひっくり返し、「作・演出 古城十忍」を「これ」と言って指さすと、「つくってる人なんですか?」と素っ頓狂な声が返ってくる。なんか妙な会話だなと思いながら、「つくってる人なんです」と答える。彼女からすれば、俳優もスタッフもつくってる人ではないのだろうか? 彼女自身、アーティストの卵だろうに、この大学の学生たちはどうも掴みどころがない。

 本日、その『眠れる森の死体』の稽古初日。
 いきなり立ち稽古で1場・2場を返しつつ進める。若手男優が大きく鍵を握るこの芝居、想像以上に茨の道になりそうだという確信だけを持って今日は終了。
 ああ、恐ろしや。胃の痛む日が続くことになるのか?

上野恩賜公園.jpg
上野恩賜公園。あっちにもこっちにも、いつもわらわらと人があふれかえっているのだが、あ、このアングル、今誰もいない、と珍しい無人の瞬間をカシャ。と思ったら左隅に小さくサラリーマンの姿が……。無念。
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