2010年06月03日

老い日記[77]――生誕18,645日/禁煙30日目

  失ってしまうと二度と取り戻せない。残念ながら、そういうものは確かにある。
 例えば、膝の軟骨。調子がいいときは意にも介さないでいるが、アタタタと思い出したように膝は痛む。決して治っているわけではない、というか、治りようがない。失った軟骨は増殖してはくれないから、磨り減ったまま、不意に痛みが走る膝となんとかうまく付き合っていくしかない。
 例えば、下がってしまった歯茎。歯と歯の隙間が少しずつ広がって、やたら食べ物が詰まるようになったら、それはもう手遅れ。その隙間が埋まることは二度とない。「歯周病は進行を食い止めることはできても、改善されて歯茎が伸びることはないんですよ」。もう何度も歯医者から聞かされている言葉を噛みしめながら、次第に(歯茎が下がって)長くなっていく歯を寂しく見つめるしかない。

 薬で痛みは消えたものの、違和感の残る左下の奥歯を治療せんがために、歯科医院へ勇んで出かける。
 「じゃ今日は左下の奥の歯に麻酔を打ってクリーニングしますね」と言った歯医者、口の中を覗き込むや、「あ、ここ、歯茎が腫れてますね」と奥歯の手前の糸切り歯の歯茎を指でぐいぐい押す。「痛いですか?」「多少。でもそれほどでもないです」「膿がたまってますね」「こっちの歯茎も少し腫れてるんですけど」「ああ、ホントですね、こっちも膿がたまってますね」「でもそんなに痛みはないです」「今日は麻酔はやめて、この2個所を膿を出して洗いましょう」
 最も違和感のある左下の奥歯の治療はまたしてもお預け。放っておけばおくほど、左奥の歯茎がみるみる下がって歯が抜けるんじゃないかと気が気でないが、歯医者は宣言した2個所をガシガシ洗って抗生物質を入れて、「はい、じゃ今日はこれで」。 ……歯周病との闘いはまだまだ果てしない。

 ところで、「FOR RENT」の貼り紙が貼られたまま借り手がつく気配のない空きスペースが近所にある。以前ここは24時間オープン(夜間は無人)の自動レンタルビデオ店だった。夜間はカードを使って店内に入り、機械にカードを挿入、借りたいDVDをチョイスすると機械から出てくる。新作が165円と安かったのでそれなりに重宝していたのだが、そのプリペイドカードに新たに3000円チャージした途端に、店は閉じた。
 そんな、これって詐欺じゃないのか? このお金も失って二度と取り戻せないのか?
「FOR RENT」を見るたびに言いようのない虚しさに包まれる。

 その一方で、もちろん失ってしまったほうがいいものもある。例えば、いつのまにやら発生してしまった癌細胞。きれいサッパリなくなってくれれば、こんなに有り難いことはない。
 さてさて我が胃癌。このまま完治なのか、胃を半分摘出する再手術になるのか。明日、運命の審判が下される。

かつてレンタルビデオ店.jpg
かつてレンタルビデオ店。バカヤロー、金返せ。
posted by 老い日記 at 23:31| Comment(1) | 日記