2010年06月14日

老い日記[88]――生誕18,656日/禁煙41日目

 
 9時にホテルを出れば空港へのリムジンバスに間に合うと踏んでチェックアウトしたのだが、あろうことかタッチの差で間に合わず。時間をめぐってのギリギリの攻防戦、ついについに敗れたり。
 ウソだろ……と、バスターミナルで茫然自失になりながら、「いやいやバスが少し遅れてんじゃねーの?」としばし辺りをウロウロするが、「始発駅ゆえ遅れるわけねーよ」と思い直し、ここは潔く、とタクシーに乗り込む。
 「広島空港まで」と言うと、タクシー運転手、「リムジンに乗らないんですか?」「それが乗り遅れちゃったんですよ、タッチの差で」「何分発のバスですか?」「9時15分です」「それなら追いつけるかもしれませんよ」「え? バスにですか?」「ええ。あのリムジンは途中1カ所だけ、N駅で停まるんですよ。追いついたら、そこからバスに乗ったほうが安くつきますもんね」。
 なんと有り難い。そんな発想、まったくなかった。運転手さん、あんたイイ人だ、恩に切るぜ。
 約10分後、「お客さん、もうすぐN駅ですよ」「間に合いますかね?」。――と、会話するフロントガラスの向こうに悠然と交差点を横切って走り抜けるリムジンバスの姿が……。「あ〜、今出ちゃいましたね」「……みたいですね」「お客さん、このまま空港まで行くしかないです」
 その後、高速に入って程なく、タクシーは快調にリムジンバスを追い越すが、嬉しくも何ともなし。上がり続ける料金メーターを気にしつつ追い越しざまに、ただただ恨めしい目つきでバスを見やるのみ。
 約50分ほどもタクシーに乗って、広島空港着。
 タクシー代は乗車料金12,930円、高速料金1,150円で、しめて14,080円。リムジンバスに乗れていれば、1,300円。なんと10倍以上。ああ、哀れ散財、哀れ太っ腹。(激泣)

 羽田に着いて携帯電話を見ると保険会社のYさんからメッセージが。電話してみると、「保険金を今日、処理しましたのでお確かめください」。
 確かに振り込まれておりました。しかも、今までの人生でやってきたどの仕事よりも高額。演出するより癌になったほうが金儲けできるんだ……と気持ちは複雑。そうか、バスに乗り遅れて散財したのは、捨てる神あれば拾う神あり。、このための手付け金ってことなのか。そんなわけはありません。

 昼過ぎには自宅に戻り、書きもの仕事に追われた後、歯科医院へ。今日はようやく左奥下の歯に取りかかってもらえる。歯茎に麻酔を打って、ガギガギゴギゴギと歯石をこそぎ落とす。
 ここの歯科医院、男先生と女先生がいるのだが、どちらが担当するかは行ってみないとわからない。今日は苦手な女先生。「痛かったら言ってくださいね」とやさしい声で言いながら、麻酔をブスッと刺す。ガギガギゴギゴギにも迷いはなし。力に任せて掘り進む。
 終わって歯科医院を後にすると、口の中に血の味が。ズーンと痛みも出始める。痛みをもらうためだけに歯科医院に行ったような気がして、なんとも腹立たしい。

 夕方から中2日空いての『眠れる森の死体』の稽古。取りたてて進展なし。若手男優たちの、積み上がっていかない演技はどういうことだろう。異星人たちを見るような目で、恨めしそうに稽古を見つめる。

 帰宅後、にわかサポーターになって、ワールドカップ「日本×カメルーン」をテレビ観戦。下馬評を覆して、日本1−0で勝利。連日の睡眠不足を押して見た甲斐あった。試合終了の瞬間には思わずガッツポーズ。
 数分後には現実に引き戻される我が身がなんとも悲しい。

キャットスリー.jpg
高速を走るタクシーの車内からカシャ。見づらいだろうがオレンジ色の鉄骨が恐竜の骨のように空中に伸びている。広島に来るたびに、いったい何を建設中なんだ?と思っていたのだが、その名は「キャットスリー」。濃霧でも飛行機が着陸できるよう滑走路へ誘導するものらしい。やっと、謎がひとつ解けた。
posted by 老い日記 at 23:35| Comment(0) | 日記