2010年11月02日

老い日記[229]――生誕18,797日/禁煙182日目

 連日の睡眠不足で重い体を引きずるようにもそもそと起き出して、朝からG病院へ。ピロリ菌駆除後の「呼気テスト」をした10月1日以来、1カ月ぶりのG病院。
 病院の建物が目に入ると、ああ、ここに入院していたんだなぁと、どこか懐かしささえ込み上げてくる。今日は胃癌手術後の経過観察のための胃カメラ検査。
 院内に入ると、迷うことなく診察カードを挿入、すっかり慣れた手つきでPHSを受け取り、まずは採血。こちらも診察カードで受付をすませ、すぐに「176番の方」と呼ばれて血液採取。あっという間に終わって、今度は2階に上がって内視鏡の受付。何も迷わず、看護師とのやりとりもスムーズ。我ながらすべての動きに無駄がなく、まるで勝手知ったる常連客のよう。(いいのか、こんなことの常連になって)
 しばし待機し、PHSで呼ばれて内視鏡検査室へ。胃カメラ挿入は確か、通算5度目。患者着に着替えてベッドに横たわると、「血圧計を巻きますね」「痛みを和らげる薬を入れますよ、少しチクッとしますからね」「脈拍を計るクリップを挟みますよ」と、右腕・左腕・指先、わっと一斉にかかられると、「ああ、もうどうとでも好きなようにしてください」という気分になり、されるがまま。まさに、まな板の上の鯉。我が体なのに、「なるようにしかならんさ」と、どこか突き放したような感覚が湧き起こってくるのが不思議。もう少し歳を取って、いよいよ死を迎えるための病院生活となったら、たぶんこんなふうに100パーセント他力本願で生きながらえることになるんだろうなぁ、とこれまた他人事のように思う。
 胃カメラを入れる前にY先生、「その後どうですか、調子は?」「はい、特に何も。調子はいいです」「体重は増えました?」「いえ、その後は変わってないと思うんですけど」「そうですか、変わらないならいいですね。ピロリ菌を駆除すると増える場合がありますから」。すると、てきぱきと準備をしていた看護師が突然手を止め、「あ、そうなんですか?」と口を出す。「ピロリ菌がいなくなると体重は増えますから」。Y先生は誰に言ったのか、もう一度同じことを言い、「そうなんだ」と看護師も独り言のように繰り返す。それを聞いていた他人任せの患者は患者で、「へえ、消化器科のナースなのに知らないんだ」と本筋とは関係ないところに関心を寄せ、「ダイエットにいいですよ」と馬鹿なことを口走りそうになるが、ぐっと我慢する。
 肝心の検査は薬で意識が混濁していて全然記憶なし。
 検査が終わって、Y先生が「きれいになってました、大丈夫でしたよ」と言う声を半ば朦朧とした頭で聞く。
 その後、別室に案内されて40分ほど横になり、麻酔から覚めたところで本日終了。看護師から注意点を説明され、服を着替えて、1階に下り、自動精算機で治療費を払い、何事もなかったかのように外に出る。
 
 夕方から新国立劇場リーディングの稽古。研修生たちは先に自分たちでアップを済ませていて、まだ少し体のだるい演出家が到着するや、直ちに稽古に突入。明日から3日間、稽古が休みになるので、なんとしても今日中に『風変わりなロマンス』を最後まで詰めたかったのだが、あと1場面を残したところで時間切れ。こちらは癌の専門病院とは違い、スムーズに、システマティックに、とはいかぬ。 
癌情報コーナー.jpg
病院内の「癌情報コーナー」も今や、「我、完治せり」と他人事のようにスルー。
posted by 老い日記 at 00:00| Comment(0) | 日記