2011年05月11日

こんな経験するなんて。――[419]生誕18,987日

 稽古場帰りの夜11時頃、ようよう家の前にたどり着いて青ざめる。嘘……嘘だ。嘘だろ。……家の鍵がない。
 途端に頭をフル回転。鮮やかに浮かぶ着替えの瞬間。そうだ、稽古着を入れて置きっぱなしにしているバッグの中だ。十中八九稽古場に忘れてきたと確信。もちろん引き返しても稽古場には誰もいない。鍵も掛かってる。開くのは明日の11時。
 改めて事実を深く認識し、ドアの前で立ち尽くす。手にはコンビニ袋、提げてるし。「こちらは温めますか?」「あ、そのままで」。どうやって食うんだ、ドアの前にはレンジはないぞ。おまけにアイスクリームまで買ってる、このどアホ。
 落ち着け、落ち着け。そうだ、大家が5階に住んでる。顔を合わせたことはないが、非常事態だ、突撃だ。エレベーターで5階に上がり、意を決してインターホンを押す。……静寂。再び、押す。再び……静寂。そうだ。と、よからぬことを思い出す。大家は確か、小田原在住……。このマンションで過ごすのは月末だけと管理会社が言っていた……。
 万事休す。ちょっと前に「我、窮地に陥る」を知らせるメールを送っていたベテラン俳優Oから、「じゃあ、マン喫?」と返信が来て殴り殺したくなる。マン喫、足を踏み入れたこともない。しょうがない、ホテルに行くしかないなと財布の中身を確かめ、敗北感を全身にまとって我がマンションを後にする。
 
 で、今、これを事務所のパソコンで書いてます。そーなんですよ、事務所が近くにあるのをパニック頭は忘れてました。とはいえ、敗北感は拭えない。ここには風呂もないし、テレビもつかないし(あるけど室内アンテナに繋いでない)、何より資料がないので書き物仕事ができません……。
 
 まさか、我が身がこんな経験をするとは。ドジなだけの話ではあるが、精神的ダメージはかなり大。
 思い返せば、1年前の今日は癌手術のため入院した日。「5・11」は自宅に泊まれない宿命なのか?
 などと思いつつ、今からでもホテルに行くべきかどうか、まだ迷ってる。悲しいです。
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ここで一夜を過ごすのも哀れ。
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2011年05月10日

死相が出てる。――[418]生誕18,986日

 本番前最後の稽古OFF。とはいえ、パンフレットの校正、小道具の調達など、やるべきことは目白押し。事務所にも午後に行っては戻り、夜にも行っては戻りと、何でも屋の演出家は雑務にも追われて芝居から解放される時間が全然持てない。ああ、今公開中の『ブラック・スワン』が観たい。
 
 夕方、散髪に行くと、少ない髪を切ってもらってる間に何度も眠りに落ちそうになる。いかんいかんと気を引き締めて鏡を見ると、眼球と頬の窪んだ死相くっきりの顔が目に飛び込んできて、一気に目が覚める。老けましたなぁ俺。死相、出てますもん。かなり古いが、「スリラー」でマイケル・ジャクソンが変身したゾンビに似てる。もしや、もう既に死んでいるのか?
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乗るのがすっかり日課になった。
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2011年05月09日

なんとかなる、はず。――[417]生誕18,985日

 稽古後、舞台監督Oと今回スタッフワークを務める若手の面々と打ち合わせでファミレス、に行くはずが混んでて入れず、居酒屋に流れる。すると舞台監督Oは座敷に座るなり、なんの迷いもなく、「ビール」とのたまう。その上、「面倒臭いから大にして」だと。おいおい、打ち合わせだよ。スキあらば飲みに走ろうとする君が面倒臭いわ。
 
 青天の霹靂の美術の大問題は、なんとか解決の方向に落ち着く。恐らく昨夜、徹夜で図面を書き直したのであろう美術家Iさんから、早朝に変更図面と道具帳がPCに届いていた。基本的には昨夜の緊急対策会議の方針に沿って修正されているが、劇場入りしてみないとはっきりしない点も残されていて多少の不安はあるものの、まぁ、なんとかなるはず。
 演出を変更する必要もなさそうなので、今日は役者に修正階段の説明をした後、第1幕・第2幕と今まで通りの流れで最後まで通る。
 面白い場面、今ひとつな場面、落差が大きい。この差はやはり、どれだけ余裕があるか。どれだけ「聞く力」があるか。結局は基礎技術に勝る者が勝つ。
 さぁ、本邦初演まで残りわずか。面白い芝居になりまっせ。
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1から10が見あたりません。
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2011年05月08日

突如、上演の危機。――[416]生誕18,984日

 夜、今日の仕上げに第2幕の通し稽古の真っ最中。美術家Iさんと一緒に劇場の下見に出かけていた舞台監督Oが慌てて舞い戻ってきて、「緊急事態だ」と耳元で囁く。小声で「どうした?」と聞き返すと、「劇場の奈落が使えない」。「なんで?」「床下には鉄骨の梁が走ってる」。………こりゃ大変だ。事態は飲み込めたが今さら慌ててもしょうがないので、「通し稽古が終わったら行く」と伝える。
 『又聞きの思い出』の美術は、畳1枚分ほどの平台という床を2枚外して、奈落(床下)から階段で上がってくる構造にして既に大道具会社に発注してあったのだが、その平台2枚の間に鉄骨の梁が……。つまり、平台2枚は外せても鉄骨が邪魔して階段として上がってくることは不可能……。
 なんと、ここに来て舞台美術変更? いや、そもそも梁があるのに変更できるのか?発注している大道具だって今さら作り直しは効かないだろう。なんとか無理を言って平台1枚分に納める階段に作りかえたとしても演技はどうなる? スペースが取れないとなるとそれだけ階段は急勾配になって、役者がスムーズに昇り降りするのは至難の業……。
 
 長年、芝居をやっていてもこんなミスが起こることに、やや唖然。稽古が終わって急遽、美術家・舞台監督・演出助手と対策会議。近くのファミレスでオッサンどもが図面を広げて真剣な顔でぶつぶつ意見し合う。もちろんギャグをかます余裕もなし。ひたすら乏しい知恵を絞り合う。しかし、一つ変えれば新たな問題が起こり、それを解決しようとするとまた問題が……。限られた条件で部分的に変更するのは相当に難しい。
 どうなる『又聞きの思い出』。初日まで、あと10日。
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世間は母の日だったようです。
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2011年05月07日

パンフレットに思う。――[415]生誕18,983日

 公演パンフレットの文章を書くのが苦手。「作品がすべてです」という思いがどうしても頭にあるゆえ、開演前に読んでもらうために何かを書くのは、何を書いても何かしらの言い訳をしているようで気が進まぬ。
 我が身は映画館に足を運んでも観る前にパンフレットは買うことはしない。見終わって面白かったら買う。事前に何かしらの情報をインプットしておくのは作品に対して失礼。その思いがあるゆえそうしているのだが、この考え方は変なのか?
 芝居のパンフレットにお客さんは何を求めているのだろう?CAST&STAFF一覧と俳優のプロフィールは必要だと思うが、それ以外は要らないのでは? いやいやこれ、書くことからの現実逃避で言ってるんじゃないですよ。もうン十年も芝居をやってるのに、未だに答えが我が身の中にない。誰か教えてください。
 
 稽古は日々熱が入り、『又聞きの思い出』は確実に進化中。役者が本気になると空気が変わる。笑いあり、感情の爆発あり、いろんな意味で各場面に凄みが出てきた。
 ウディ・アレンの人間を見つめる眼差しはやはり、とても他人とは思えない。稽古を見ながら自己チューの毒吐き演出家はアレンにめちゃくちゃ友情を覚えている。
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初期作品を集めたウディ・アレンのDVD-BOX。おバカ映画が結構あります。でもお薦めは『インテリア』。
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2011年05月06日

体重5kg減。――[414]生誕18,982日

 本日、約1カ月で体重5kg減に到達。人間、痩せようと思えば痩せるもんだ。体重計に乗るたびに数字が少しずつ減っていくのがちょっと快感。ダイエットの喜びも少々実感できたりしてオッサンは日々、乙女のように体重計に乗る。(笑)
 しかしながら5kgといえば相当な肉の量のはずだが、いったいどこの部分が痩せたのやら自分ではさっぱりわからない。 だぶつく腹、満月に近づいていく顔の輪郭。何も変わっていないように見えるのだが、5kgはいったいどこの部分から消失したのか?もしやこれは幻? 見間違いではないのか? などと勝手に不安をあおり、またまた体重計に乗って事実を確かめる。オッサン、減量がよっぽど嬉しいようです。(哀)
 
 しかし体重は落ち始めても体の疲れ具合はさほど変わらない。今日も1時から10時まで、みっちり稽古を終えて家に帰ると、途端に化石のようになっている。
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ごもっともです。
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2011年05月05日

実はドMなのか?――[413]生誕18,981日

 朝起きて午前中はちょろちょろと書き物仕事。昼には稽古場に向かい、夜の10時までほぼ缶詰め。11時頃に帰宅すると肉体も精神もへろへろ。
 でもって疲労回復しないまま翌日には体に鞭打ちながらまた稽古に出かけ、さらに疲れだけを蓄積させていく。
 ……これはどう考えても拷問ではないのか? 拷問の日々になぜ自ら邁進しているのか?ドSを自認してはばからなかったが、もしや我が身はM男なのか?
 
 今回の公演はミスター・ウエスタン俳優Nさんをはじめ、客演が4人と豪華。そのあおりを食って劇団の若手メンバーは地味にコツコツと(悔しさを押し殺し?)スタッフワークにいそしんでいる。
 なので稽古でなかなか上達しない若手のOやSやNにここぞとばかりに罵声を浴びせることもなく、従っていつもより毒も吐かず(むしろ客演の皆様に気を遣い)、
 「溜め込む作業>吐き出す作業」
 という図式で毎日が過ぎている。肉体も精神もへろへろになるのは恐らくここに原因があるのではないか。いやいや、きっとそうだ。やはりここは、相手が客演だろうが毒を吐き、スタッフワークがなってないと若手にも毒を吐き続けなければ。(この男、何かが間違ってます)
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『又聞きの思い出』で重要な意味を持つベッド。歴史は夜つくられるのだね、やはり。
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2011年05月04日

新人Hの歓迎会。――[412]生誕18,980日

 夕方から劇団のミーティング。初日が迫り来る『又聞きの思い出』ではなく、議題の中心は秋の地方公演。スケジュール確定に稽古場確保、役割分担など一つ一つ詰めていると、あっという間に予定時間をオーバー。
 「じゃあ、来年の予定と演目については飲み会で」
 
 というわけでその後、期待の新人Hの歓迎会。とはいえ、始まってみればHのことなどそっちのけでバカ話や芝居の話で盛り上がる。来年の演目の話をし始めると、久々の「劇団飲み」が楽しかったのか、ベテランOはいつのまにか早々にへべれけになり、わーわー喚き散らしながらどんな話にも首を突っ込んでくる。やだやだ、こんなオッサンにはなりたくないと人の振り見て我が振り直す。
 そっちのけだったにもかかわらず、哀れHは終電を逃し、なのに年寄り連中は「お疲れ」とさっさと引き揚げ、結局、いたずらに生命力だけが有り余る若手だけが「朝までカラオケ」へと繰り出していく。元気だ……。
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買うのはやめたようです。
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2011年05月03日

一進一退なり。――[411]生誕18,979日

 GW真っ只中ながら、芝居の稽古だけで時間が過ぎていく。しかも、あっという間に過ぎていく。時間が通り過ぎた後、それなりの成果があったのか、一日を振り返るのが恐ろしい。
 
 昨日、復調して軽かった体が今日はまた急に重くなる。イヤ別に具合は悪くないのだが、ストレッチで体が全然伸びてくれない。日替わりで体が伸びたり、伸びなかったり。その日の体調のバロメーターにはなるが、こうも日替わりで調子が違うとだんだん自分の何を信じればいいのかわからなくなる。一進一退。それが「老い」の身の必然だとわかってはいても。
 
 稽古は今日も第1幕にかかりっきり。それで目覚ましく進展してくれればいいが、こちらも一進一退。というのも、『又聞きの思い出』の登場人物たちは曲者揃い。
 この嘘は見え透いた嘘なのか? 本音が混じっているのか?これは優しさから出た言葉なのか? それとも自己保身を計算した上でのセリフなのか? 解釈の仕方によっては場面の意味が大きく変わってくる。――日々、人間に対する洞察力を磨かせてもらってます。一進一退ではあるが。
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と、アレンは申しております。
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2011年05月02日

みっちり稽古に突入。――[410]生誕18,978日

 体、ようやく復調。原因不明の気持ちの悪いだるさから、ようやく抜け出す。ウォーミングアップをする体も軽く、よく伸びる。おお、帰ってきましたね、我が体。お帰りなさい。
 ――しかし、あのだるさはいったい何だったのだろう。去年の癌発覚のように、何かトンデモナイことが我が身の体内で進行しているのではないかと気が気ではない。
 
 『又聞きの思い出』はいよいよ追い込み稽古に入り、今日から長時間稽古に突入。しかし、予想以上に稽古場が狭かったため、役者もスタッフも居場所を確保するのもひと苦労。何かと大変ではあるが、それでも本番さながらの置き道具が並ぶ、実寸での稽古は楽しく、心躍る。
 劇場入りまで2週間。やる気満々で行きまっせ。
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稽古場の舞台監督の机。作りかけの小道具、ガムテープはペン立て代わり。A型の我が身には許せない雑然さ。
あ、この舞台監督もA型でした。
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2011年05月01日

気持ち悪いだるさ。――[409]生誕18,977日

 目覚めれば頭がどんより。でも風邪ではない。そう我が身に言い聞かせるものの、妙なだるさが体から取れない。筋肉の疲労というより内臓が言うことを聞いてくれない。そんなイメージなのだが、ホントに妙な嫌な感じのだるさなので、たまりかねて昼前から少し横になる。だが気持ち悪さはそれでも消え失せてくれず、結局、稽古はウォーミングアップをパスしてしまう。
 もしや、これはまた我が身に癌細胞が体内に出現したのではないか? ――と妄想だけはたくましくなるが、思い返せば急性胃腸炎の延長で胃カメラ検査をしたのが去年の3月4日、癌発症を通告されたのが3月19日(この「老い日記」のスタート日)、そして癌の切除手術が5月12日。いつのまにか約1年が経過しているわけで、この間に新たなる癌が発生していたとしても何の不思議でもないのかもしれぬ。
 などと鬱々たる気分でいたのだが、芝居の稽古を進めるうちに徐々に元気を取り戻す。体の内側に溜まっていた毒を「ダメ出し」という毒に変えて遠慮なく吐き出したのがよかったのかもしれぬ。やはり役者に煙たがられようと、人でなしと罵られようと、稽古で毒は吐かねばならぬのだ、我が身のためにも。と、演出家は固く心に誓う。
 などと自己チューに考えてしまうのも、目下稽古中の『又聞きの思い出』に出てくる人物が皆、恐ろしく自分勝手で愚かな大人ばかりなので(だからこそ、この上なく魅力的なのだが)、どうやら我が身もこの人物たちに感化されているのだから自己チューも仕方ないと、何かを間違って理解している演出家は自分勝手な我が身を今日も独り慰めている。
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街角で大震災チャリティーの演奏パフォーマンスに出くわす。吹き荒れる善意の嵐は自己チューではないよね?
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