2011年08月21日

俺たちの甲子園。――[521]生誕19,0696

 ついに本番当日。11時から通算4回目のゲネプロ。こいつらに解釈を理屈で言っても効果なし。何度も何度も繰り返して徹底的に体で覚え込ませるべし、と演出家は本番間際になっても「パブロフの犬」作戦に望みをかける。
 ゲネプロ終了後、ダメ出しに熱を入れて吠えまくっていると、あっという間に午後1時。開場30分前。急いでマチネのプリセットを済ませ、スタンバイ。
 控え室では女子が我が物顔でぎゃはぎゃは言い合って本番直前のテンションを楽しんでいるのに比べ、主役のM(18歳男子)はセリフをぶつぶつ言ったりしているが5分ともたず、トイレに駆け込む。緊張? プレッシャー? 大丈夫か?
 マチネ本番。段取りのミスもいくつかあったが(パブロフの犬作戦、撃沈)、出来はまずまず。だが、ここで安心はできず、終演後、直ちにソアレに向けて、懲りない演出家は再びパブロフの犬作戦に出て、転換の段取りなどをしつこく繰り返す。
 1ステージ終えて本番の雰囲気を掴んだからか、再びスタンバイに入っても、今度は皆、余裕の構え。ただ一人、主役のMのみが気持ちをぱんぱんに緊張オーラを出しまくる。
 ソアレ本番。大きく崩れることも、緊張で空回りすることもなく、2回目の出来もまずまず。お客さんも笑いが絶えず、最後の切ない場面でも客席との一体感があり、暗転になって、よおし、みんなよく頑張ったな、と思っていたら、カーテンコールの照明がついて見ると、主役Mが泣いている。しかも号泣。おいおい、泣いちゃいかんだろ。主役Mは構うことなく、涙をだらだら流しながら一礼。わあ、青春だあ。恥ずかしい。既に青春からほど遠いオッサン演出家は戸惑うばかり。
 客出しがひと段落した頃、ロビーに様子を見に行くと、Mはまだ号泣。我が顔を見つけるとすかさず寄ってきて抱きついてくる。「そんなにしんどかったか?」と聞くと、「はい(ぐすんぐすん)」。おいおい、ここは嘘でも「そんなことないです」と言うとこだろ?と思いつつ、「じゃあ、明日もう1ステージやるか」と冗談をかますと、きっぱり「もういいです」。おいおい、ここは嘘でも……ま、いいか。
 
 その後、全員でバラシにかかり、きれいさっぱり芝居の跡形もなくなったところで、10時前から打ち上げ。
 午前1時に1次会終了。まだまだエネルギーが有り余る若者どもは、「カラオケに行きましょう」と誘ってくるが、既に生命力乏しいオジサンはひと言、「行かん」。「サプライズできっと古城さんが後から来ると信じてますから」というMの言葉を振り切ってホテルに帰る。
 まぁ、仕事に追われる身でなかったなら、「いえーーい!カラオケ!」と若ぶりたい気持ちもなくはなかったのだが、仕事を投げ出せるほどの勇気もなく、ああ、チェックアウトまであと6時間かと、独りむなしくパソコンに向かっている。
 『俺たちの甲子園』、幕。
 ご来場の皆様、ありがとうございました。
『俺たちの甲子園』舞台.JPG
『俺たちの甲子園』の舞台。写真はピンぼけながら、芝居は若者の熱気むんむん。(だったと思いたい)
posted by 老い日記 at 00:00| Comment(1) | 日記