2012年10月13日

ただぼーっとしている。 ――[940]生誕19,509日

 「東京メトロでは警戒を強化しております」

 地下鉄でやたらとアナウンスが流れるなぁと思っていたら、世界銀行年次総会の東京開催がその理由であった。何がどう強化されているのかは、地下鉄構内を見回してみてもさっぱりわからなかったけれど。

 地下鉄と言えば、この頃は電車に乗っても活字を読まなくなった。以前は十中八九、本を読んでいた。
 電車に乗る=読書の時間。
 それが決まりになっていた。なのでバッグには必ず読みさしの小説を忍ばせていたのだが(それが週刊誌やコミックになる場合もあったが)、今ではすっかり活字離れが進んでいる。
 で、何をしているかというと……スマホなんだね、これが。乗り合わせた車内では右も左も真向かいも、みんな小さな画面とにらめっこ。20年前なら考えられなかった、ある意味ゾッとするような光景の一員にオッサンもすっかり収まっている。
 しかし、そのスマホにもすぐ飽きてしまうので、実のところ何をしているかというと……何もしてない。これが正解。ただ座って(あるいは立って)ぼーっとしている。
 若かりし頃、電車の中で何もせず、ただぼーっとしているオッサン、オバチャン、ジーチャン、バーチャンを見るにつけ、よく何もせずボーッとしてられるな、時間がもったいなくないのかよ、などと思っていたのだが、今ならわかる。

 スマホをいじるのも、本を読むのも、相当にエネルギーが要るんです。老いの身にはそんな余力はありません。息を吸う。息を吐く。それだけのエネルギーを保つのがやっとで、活字なんぞ追い始めたら直ちに目は痛くなり、頭は疲れ果て、目的地(稽古場とか会議室とか)にたどり着く頃には、充電ゼロになってしまい使いものにならない。ただただ、生物的に生きているのが精いっぱい……。

 作家の丸谷才一さんが亡くなった。87歳。文章の上手い人だなぁ、と生意気にも10代の頃に思っていた。長編を飽きさせないテクニックがあるんだなぁ、と20代のときに教えられた。もっともっと書いてほしかった。

 すっかり縁遠くなってしまった小説と再び向き合ってみるか。密かにそう我が身に言い聞かせました。
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丸谷氏の『たった一人の反乱』。我が身が17歳の頃に興奮して頁を繰り続けた日が、まるで昨日のことのよう。
posted by 老い日記 at 00:00| Comment(0) | 日記