2010年05月14日

老い日記[57]――生誕18,625日/禁煙10日目

  入院4日目、術後3日目。
 昨夜の高熱は、薬を飲んだ後、うんうん唸りつつ電気毛布で汗をかき、体の節々が痛い痛いと呻きながら睡眠と睡眠の手前を行ったり来たりし、その合間合間に少しずつ少しずつ熱が下がっていくのを実感、朝6時前に測ったら36.7℃、ようやく平熱に戻っていた。
 今年2月、急性胃腸炎で丸4日間続いた「しゃっくり」がようやく止まったときにも思ったのだが、本当に治まったときは「あ、治まった」となぜだか、はっきりわかる。2月のしゃっくりのときも、「あ、今度は間違いなく止まった」と思えたし、昨夜の発熱も、「あ、これでもう熱は上がらない」と確信があった。
 だから思うのだが、反対の場合でも、つまり体が体の異変との闘いの果てに敗れてしまったときも、「あ、これで俺はもう死ぬ。二度とこちら側に戻ることはない」と自覚できそうな気がする(まだ経験はないが)。
 もし、自覚できる・自覚できない、どちらか選べと言われたら、「自覚できる」を私は迷わず選びますが。
 
 熱が下がったので、朝食に続いて昼食も頑張って完食。
 午後、検温に来た看護師に、「具合はどうですか? お腹の痛みもありませんか?」と聞かれ、実は昨日から少し気になっていたのだが、気にしすぎじゃないのか?と自分で打ち消していた違和感を告白。
 「胃がどうも張った感じがして、押すと少し痛いんですよ」
 看護師は親身になって問診しながら胃の辺りに聴診器を当てたりしてくれ、「食事はどれくらい食べられました?」「(やや胸を張って)完食しましたよ」「食事、残してください」「え、残すんですか?」「はい、胃に食べ物がたくさん入ると、それだけで胃壁は圧迫されますから、あまりよくないんですよ。胃が張ってる感じになるのは食後じゃないですか?」
 ……はい、確かに食後です。
 しかし、出された食事も治療の一環、無理してでも全部食べねばと思っていたのに。残さないといけなかったとは……。
 「食にいじましいほうが治りが早い」と教えてくれたイラストレーターFさん、どうやらいじましくても治りは早まりません。むしろ、悪化します。何でも腹八分目がいいようです。

 看護師がらみでもう一つ。昨日書き忘れていたが、健康状態を見極めるバロメーターとして「観便」がある。
 かんべん? どんな字書くんですか?
 そう入院初日に担当K看護師に聞いたところ、「便を観察するんです。黒い便、赤い便が出てないかどうか。だから流してしまわないで、終わったらナースコールで呼んでくださいね。看護師が来て観便しますから」。
 ええー? 自分で観便じゃなくて看護師が?
 いやぁ、これはこっ恥ずかしいことだと思っていたのだが、火曜に手術、水曜に食事が始まっても便意はなく、おやおや?と思っていたら、昨日の木曜日、ありました、お通じ。
 で、用を足した後にナースコールで呼び出し。「はぁい、今行きまーす」と明るい返事に、かえって狼狽。やってきた看護師は「便ですね?」と言ってトイレのドアを開けて便器内を覗き込み、「茶色ですね。はい、OKでーす」と、言われなくても知ってることを報告してくれるが、「知ってますよ、さっき自分でも見ましたから」とは返せず、ただ、えへらえへら、と愛想笑い。
 恥ずかしい。ひたすら穴に入りたい。どうせなら素っ裸で踊っていいですか? そのほうがまだまし。
 なんだか、この羞恥むき出しの試練があるのかと思うと、先生、何が何でも便意を我慢したくなるんですけど、これってどうなんでしょうか?

 S生命のYさんに電話をしたら、日程を調整して今日来てくれることになり、5時半すぎにようやく初の、ご対面。
 Yさんは俺と前担当のMが高校の同級生だということに相当驚いていたが、「で今、あいつと全然連絡取れなくなってるんですよ」と言うと、「連絡先ですか?」と自分のケータイをチェックし始めるので、なんだ連絡つくんじゃん、と思っていたら、「ああ今、ちょっとわかんないですね、すいません」って、おい。
 Yさんの話によると、今も保険の仕事をしてるようだが、なぜか詳しいことは教えてもらえず。なぜ?
 でも肝心の保険のことはYさん、実に丁寧に簡潔に教えてくれて、必要書類もすべてもらう。
 「早ければ明後日の日曜には退院できるかもしれないんですけど」と話していたら、若き医者チームが回診に来て、「古城さん、日曜までは様子を見ましょう」と日曜退院説をあっさり一蹴。これで月曜退院は決定的に。まぁ、病院に書いてもらう書類も月曜にならないと提出できないので、よしとする。

 親切に応対してくれたS生命のYさんが帰ってほどなくして、今度は主任医師のYさんが部屋にやってきて、「退院して来週はずっと自宅で休めますか?」と聞く。
 「いえ、金曜日には飛行機に乗る予定なんですが」「それはお仕事で?」「はい」「どちらに?」「熊本に」「それは誰かに代われませんか?」「いやぁ、それはちょっと……」
 熊本での仕事はオーディションで、この日で広報されているから今から日程変更は難しいだろうし、演出する自分が行ってオーディションしないことには話にならない、といったことを訴えると、Y医師は「もし、あちらで体調が悪くなったときのことを考えるとですねぇ〜」と、さりげなく怖いことを言う。
 なんでも術後、5〜6%の人に出血が起こるんだそうな。で、出血の大半は術後1週間以内に起こるらしいが、2週目に出血する人も1〜2%はいるらしい。
 「まぁ大丈夫だとは思いますが」と言いつつも、Y医師はリスクのほうを何度も具体的な数字を挙げて言い聞かせてくれる。なので無理だとわかりつつも、「わかりました、オーディションの日程をズラせないか一応、先方に聞いてみます」と心にもないことを言う。
 出て行こうとするY医師を「あ、先生」と呼び止め、「あのプライベートなことですみませんが、先生、おいくつですか?」と聞くと、なぜ年齢を聞かれるのだろうという顔をしながら、「42歳ですが」と答えてくれる。「あ、若いですね」と素直に言ったつもりが、Y医師はどんな表情を浮かべたらいいのか考えあぐねている様子のまま、「そんなに上に見えます?」「あ、いえ、Y先生が内視鏡のナンバーワン・スペシャリストだと聞いてたんで、お若いのに」「いえいえ、全然そんなことありませんよ」と謙遜しつつ、ナンバーワンは部屋を出て行った。
 実は入院初日、担当のK看護師に、この病院の医師のレベルの高さを教授されて、「中でも内視鏡スペシャリストのナンバーワンは誰?」と聞いたところ、「Y先生」と即答された。「へー、そんな人に担当してもらって俺はラッキーですね」「ラッキーですよ」「Y先生、何歳なんですか?」「えー、っと、あれ、何歳だろう? 今度聞いてみてくださいよ」。
 とまぁ、こんなやり取りがあった次第。しかし、42歳とは。周りの人の接し方やキャリアから、もっと上、もしかしたら俺と同じくらいかなと思っていた(実は見た目も)。

 夜になって続きを読み始めた『1Q84』、朝方までかかって残り半分ほどを一気に読破。
 村上春樹って確かもう還暦じゃなかったか? そんな歳にもなってこんな物語が書けるのは、やはり作者が「万年青年」だからなのか?

14日朝食.jpg
朝食(潰瘍食):全粥、里芋ごまだれ、小松菜煮浸し、たいみそ、みそ汁、牛乳。515kcal、蛋白質20.46g、脂質13.07g。
たいみそを粥に載せると味つきに大変身。
14日昼食.jpg
昼食(潰瘍食):全粥、鶏肉ケッチャップ煮、卵入ポテトサラダ、海老といんげんソテー、オニオンスープ。581kcal、蛋白質23.27g、脂質21.50g。
何じゃこれは?と思ってしまったオニオンスープ。
14日夕食.jpg
夕食(潰瘍食):全粥、八宝菜風、華風豆腐(軟)、果物(もも缶)、中華スープ。520kcal、蛋白質23.10g、脂質15.23g。
中華はすべて薄味。お粥を3分の1ほど残す。
posted by 老い日記 at 23:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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