2011年04月15日

再起に賭ける。――[393]生誕18,961日

 数日前、高校時代の同級生TMから数年ぶりに電話があった。「おう久しぶり、どうしてんの?元気?」と素っ頓狂な声を上げると、「うんまぁ、家は流されちゃったんだけどね」。
 そうだ、Tは仙台に住んでいたんだった。友達思いのない薄情男は遅ればせながら思い出して言葉を失った。
 TMは去年、自分で興していた住宅リフォームの会社が倒産、今年「3・11」の津波で追い打ちを掛けるかのように自宅までが消えてなくなった。倒産後、再起をかけて個人でリフォームの仕事を再開していたのだが、この大震災でリフォーム材がなかなか入手できない状態だという。「で、Nの連絡先を古城なら知ってると思って」。Nは我が高校時代の仲間の一人で、大手製鉄メーカーに勤務している。たぶん、藁にもすがる思いで電話してきたのだと思うが、TMの声には少しの暗さもない。むしろ高校時代そのままに底抜けに明るい。もちろん、Nの連絡先はすぐに教えた。
 「家族はみんな無事?」、友達甲斐のない男がおずおずと尋ねると、TMは「無事だった、お陰様で」「よかった」「うん」。
 「大変だったな」。月並みな言葉を押し出すと、「元気でいられるんだ、家くらいどうってことない。まだまだ今からだ」
 TM、おまえは偉い。その明るく、屈することのない根性には、ただただ頭が下がる。非力な演出家は深い深い痛手を受けているはずの同級生に逆に励まされる思いで電話を切った。
 
 午前中から制作F女史と今後の打ち合わせ。なかなか先の見通しが立たず問題は山積しているが、このちゃらんぽらん男に切実さはない。たぶん、ただ問題を先送りにし、見て見ぬふりをしているだけなのだが。
 なんでもF女史のご主人Tさんは定年退職後、ロンドンに居を移してサッカー観戦三昧の日々を過ごすため、今から倹約に努めているとか。生真面目で規則正しいTさんのことだ、きっと来年にはロンドンで思い描いた通りの人生を送っているだろう。「定年後15年はサッカーで人生を送るんだって。そしたら75歳になってるわけで、それから先はどうする?って、この前夫婦で真剣に話し合ったんだ」。ひえー。75歳からの人生も視野に入れているとは……。恐るべし。
 
 なんとか会社を軌道に乗せようと再起に賭ける奴もいれば、定年後の充実した人生を考えて行動を起こしている人もいる。人生いろいろではあるが、ともに10年先15年先を見据えて動いてる点は同じ。そこが「どーせ、来年の桜が見られるかどうかもわかんないんだし」とうそぶく男とは大きく違う。 いいのか、我はこんな人生で。
曲がったことが.jpg 
根が曲がった性格なもんで。
posted by 老い日記 at 00:00| Comment(0) | 日記
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