2011年05月23日

外郎、好きだし。――[431]生誕18,999日

 延々1時間以上の移動時間をかけて、昼12時には小手指の駅に降り立つ。「思えば遠く来たもんだ」。中也の詩を呟きつつ、さらにバスに乗って揺られる。
 そういえば先週、バスに乗り込もうとして、ふと不安になり運転手と交わした会話。
「すいません、このバス、S高校に停まりますか?」「ボタンを押していただければ停まります」
 そりゃそうだろうという返事に一瞬、唖然となる。どう見たってオッサンである我が身が、バスから降りるにはボタンを押さねばならないことを知らないとでも思ったのか。
 そりゃね、「このバス、S高校に行きますか?」が正しい聞き方だったかもしれないよ。でも、わかりませんかね普通。一瞬、運転手のギャグか?という思いも頭を掠めたが、運転手は至って真顔、しかも即答。なんだか一気にやるせななくなり、「ゆあーん、ゆよーん、ゆやゆよん」、またしても中也の詩の一節を思い浮かべて、頭の中でぐるぐる回す。
 
 12時40分から演技の授業。箸が転んでもおかしい女子高生軍団は風邪が蔓延しているのか、見学者多数。欠席者も加えると約4分の1がダウンしている。いつもは騒々しい授業も人数が少ないぶん、やかましさもややトーンダウン。見学者の中には、いつも率先して黄色い声をあげる軍団の顔もチラホラ。その中の一人は頭から毛布をすっぽりかぶって見ていて、授業の後半になって「寒いのか?風邪?」と聞くと、青白い顔で首を縦に振る。「そんなに具合悪いなら帰れよ」と続けて言うと、「せっかくここまで頑張っていたんだから。あと少しだし」。
 どうやら見学と欠席では単位の取得に大きな差が出るらしい。毛布女子高生はさらに言葉を続け、「それにあたし、外郎、好きだし」。――そうかそうか、授業でやっている「外郎売り」をテキストに使った即興稽古が好きなのか。やかましいな君らといつも大声を張り上げながらオッサンは思っていたが、そうか、好きだったのか。それまで宇宙人のようにしか見えなかった女子高生に急に親近感が湧く。
 
 授業を4時半に終えて急いで劇場へ舞い戻る。と言っても、西武池袋線→西武新宿線各停→西武新宿線急行→東西線と次々に乗り継ぎをこなし、なんとか開場10分前に間に合いたかったのだが、タッチの差で間に合わず。ただのお客さん状態で『又聞きの思い出』を堪能する。
 終演後は『トーキング・トゥ・テロリスト』に出てもらった俳優Tさん(3○○)、ついこの間まで『R.P.G.』で一緒だった俳優Sさん(文学座)、新国立演劇研修所を修了したばかりのD君らをはじめ、10人以上でわいわい飲む。
 居酒屋に入る前はいつも、小1時間くらいで、と思うのだが、一旦飲み出すと腰の重くなるオッサンは今日も終電時刻とにらめっこしながらぎりぎりで店を出る。
 
 今日の再発見。電車で化粧する女に美女はいない。今日、目の前に座ってしつこくしつこく、これでもかとマスカラを塗り続けていた女性を見ながら、「君はそのマスカラ、顔全体に塗ったほうがいいんじゃないの?」と本気で思ってしまう。
のどかな風景.jpg

都心から1時間あまり電車で揺られると、のどかな風景に出会える。そう考えると都会って随分狭いエリアなんですな。

posted by 老い日記 at 00:00| Comment(0) | 日記
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